2025年1月~2月のマイベスト邦楽7曲は多分これだろう

音楽

邦楽《個人的ベストソング》2025年1月~2月

早いもので2025年が始まってもう2か月。この記事では、2025年1月~2月にリリースされた邦楽の中から、個人的に特に心に響いた楽曲を紹介します。単にチャートや売り上げに基づくランキングではありません。あくまで個人の趣味や感性を軸にして選んだ楽曲ですのであしからず。

記事の終わりには、この記事で紹介しきれなかった楽曲も楽しめるSpotifyプレイリストも作成しました。ぜひそちらもチェックしていただければ嬉しいです。

HANA『Drop』

HANA / Drop -Music Video-

『No No Girls』(ノーノーガールズ)は、BMSG傘下の芸能事務所B-RAVEが主催した、身長・体重・年齢を問わない革新的なガールズグループオーディション番組です。通称「ノノガ」として知られ、プロデューサーはちゃんみな、エグゼクティブプロデューサーはBMSG社のCEO・SKY-HIが務めました。

このオーディションを通じてデビューを勝ち取ったのが、7人組のガールズグループHANAです。2025年にデビュー予定の彼女たちですが、今後の日本の音楽シーンを語る上で欠かせない存在になる予感をひしひしと感じる一曲です。

日本のガールズグループは、今まさに新たなステージへ進もうとしているのかもしれません。XGをはじめ、ボーカル・ラップ・ダンスのクオリティが飛躍的に向上し、世界的な評価も高まりつつあります。そんな中で登場したHANAは、この流れの中でどのような存在感を示していくのか注目されます。

グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーは、「2025年はJ-POPが躍進する年になる」と予測しています。

5 Music Trends You May See In 2025: The Rise Of J-Pop, Music Video Craze & More

この記事の内容には議論の余地がありそうですが、日本のアーティストが国際的な舞台で活躍の場を広げているのは確かです。そして、まだHANAの楽曲を1曲しか聴いていないものの、そのポテンシャルの高さを感じました。彼女たちが日本の音楽シーンの新しい時代を切り開く存在となるのか、これからの動向に期待したいところです。

米津玄師『Plazma』

米津玄師 Kenshi Yonezu - Plazma

米津玄師が2024年11月にリリースした『Azalea』は、ここ最近のお気に入りの一曲です。以前の記事で、この曲の冒頭に使われた「蛍光灯が消えかかる音」に注目しましたが、新曲『Plazma』のMVにも同じような音が使われています。プラズマと蛍光灯は密接な関係があるため違和感はありませんが、直近のMV2作で続けて登場するのは偶然とは言えないかもしれません。

また、『Plazma』は米津玄師のボカロP時代の名義「ハチ」を彷彿とさせるサウンドが話題になっています。2024年には、ハチ時代の名曲『ドーナツホール』の新MVも公開されました。さらに、『Plazma』の直後にリリースされた『BOW AND ARROW』も、この流れを継続するような楽曲です。

ボカロ音楽が再評価されつつある中で、米津玄師の音楽スタイルの変化をどう捉えるかは意見が分かれるかもしれません。個人的には、この米津玄師のモードが、今後の日本の音楽業界にどのように影響を与えるのかが楽しみです。

米津玄師『BOW AND ARROW』

米津玄師 Kenshi Yonezu - BOW AND ARROW

2024年にアルバムをリリースし、その後もシングルを発表し続けた米津玄師。インタビューでは「2024年は最も忙しい一年だった」と振り返っています。

米津玄師「Plazma」「BOW AND ARROW」インタビュー|あの頃の気持ちで、軽やかな自分で 今解き放つ2つのアニメ主題歌 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

そして2025年も、その勢いは衰えません。1月にはすでに2曲の新曲を発表し、2月には35万人動員した国内ツアーを完走、3月からは自身初となる欧米を含む世界ツアーも予定されています。

「BOW AND ARROW」は、TVアニメ『メダリスト』のオープニング曲として書き下ろされましたが、特筆すべきは、その制作経緯です。オファーを受けたのではなく、原作漫画のファンだった米津玄師自身がアニメ化のニュースを知り、自ら主題歌の制作を申し出たとのこと。このエピソードには驚きましたし、アニメ制作側も予想外だったのではないでしょうか。

また、『Plazma』同様、本作も編曲を含めすべて自身で手がけており、彼の音楽的個性が色濃く表れています。昨今のボカロP的音楽の人気の高まりを考えると、「今、米津玄師がハチ時代のような音楽スタイルを取り入れたらどうなるのだろう」という個人的な妄想を抱いていました。

その妄想が具現化したのか何なのか、『ドーナツホール』の新MV公開から『BOW AND ARROW』までの一連の流れがやってきました。これらはすべて、彼のさらなる飛躍への序章のようにも思えてきます。

Uniolla『それでも』

Uniolla - それでも 【Official Audio】

Uniollaの新曲『それでも』は、2025年1月15日に配信リリースされた、LOVE PSYCHEDELICOのヴォーカルKUMIが手がけるプロジェクトからの待望の一曲です。作詞・作曲・編曲を担う深沼元昭は、この曲を「誰かが少しだけふらついたときに、手を伸ばしたらそこにある手すりのような曲」と表現し、音楽や“バンド”という形態がもつ力を信じ続けたいという思いを込めたといいます。

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この曲の歌詞では、かつて当たり前に持っていた強さを取り戻そうとする中で、逆に戸惑いが増してしまうような切なさが描かれています。私自身、この曲が放つ“過去も現在も未来も肯定する”まなざしに救われました。

もう戻れない出来事をなかったことにできないとしても、「それでもいい」と笑いかけるような優しさが胸に刺さります。過去は変えられなくても、そこから続く今をどう受け止めるかは自分次第。肯定を押しつけないその姿勢が、そっと背中を押してくれるようでとても心地よいです。

日食なつこ『風、花、ノイズ、街』

風、花、ノイズ、街

日食なつこの新曲「風、花、ノイズ、街」は、2025年1月15日より放送のドラマ『こんなところで裏切り飯〜嵐を呼ぶ七人の役員〜』オープニングテーマ。

日食なつこ、新曲「風、花、ノイズ、街」がドラマ『こんなところで裏切り飯~嵐を呼ぶ七人の役員~』OPテーマに – Real Sound|リアルサウンド

この曲を聴いてまず惹かれたのは、思わず外へ飛び出したくなるような躍動感です。31秒ものイントロが、軽快なドラムのリズムとともに、ギター・ベース・鍵盤で助走をつけ、今まさに“走り出す”ような高揚感を演出。歌詞に一度だけ使われる「春」というワードが全体の景色を一気に広くしてくれる感覚があり、同時に春恐怖症である私のこの期待感と舌打ちが同時にやってくるような不安定さを呼び起こします。春っていいですよね。

街を一つの生物にたとえたような視点や、生き物の中に確実に流れる時間へのまなざしが、街それ自体を有機的なものとして捉え直すきっかけにもなりました。曲全体が常に前を向いているようで、散歩やドライブのお供に最適そうです。

好芻(SUSU)『SPARK!』

好芻(SUSU) - SPARK!MV

好芻(スースー)は、tricotやジェニーハイのボーカルを務める中嶋イッキュウと、ex.The Cigavettesやsunsiteでギターを担当した山本幹宗による音楽プロジェクトです。今回の楽曲では、前作に引き続き元NUMBER GIRLの中尾憲太郎(ベース)とアヒト・イナザワ(ドラム)が参加し、リリースと同時に公開されたミュージックビデオにも両名が登場。

ちなみに、MVはスタジオライブの映像です。前作の『途切れないで』とひとつなぎになっているので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

『SPARK!』は、疾走感のあるリズムと歪んだギターサウンドと懐かしめのシンセサイザーが特徴。ヘッドホンで爆音で聴きたい楽曲です。歌いだしからエモさ爆発です。楽曲の根底には「現状を疑う気持ち」が横たわっているように思いますが、同時に「前を見据えるまなざし」が滲み出ており、聴き終えた後は清々しい爽快感が残ります。中嶋イッキュウの力強くも澄んだボーカルは、轟くギター音の中を風のように走り抜けます。

この楽曲は、過去でも未来でもなく、今ここにおいて「スパークする瞬間」を忘れないよう呼びかけているように感じられます。

サカナクション『怪獣』

サカナクションの新曲「怪獣」は、約3年ぶりとなる配信シングルで、NHK総合テレビで放送中のアニメ『チ。―地球の運動について―』のオープニングテーマとして制作されました。バンドとしては初めてのTVアニメ主題歌であり、ボーカル山口一郎による力強い歌詞が、作品の哲学的テーマと共鳴していると評判です。ちなみに「チ。」漫画も良かったですがアニメも面白すぎませんか?

ミュージックビデオはアニメ映像を再構成したコラボ仕様となっており、キャラクターの名場面と楽曲がシンクロする演出が話題になっています。配信リリース後は各音楽チャートで上位を獲得し、久々の新作に対するファンの期待の大きさが感じられます。Spotifyのデイリーチャートでリリース初日に一位を獲得したのはKing Gnu『SPECIALZ』以来だそうです。また、山口一郎の病気療養を経て復帰した後に制作されたこともあり、バンドにとっての“再始動”を象徴する重要な一曲となっています。

原作漫画やアニメのファンとして、この曲は「チ。」の物語に真摯に向き合いながらも、アニソンの枠に収まらない普遍性を備えていると感じました。真実や知識が受け継がれるまでには多くの犠牲が伴いますが、それでも未来を信じ、手を伸ばす意志が歌詞の随所に散りばめられています。散っていく花びらのように失われた存在と、ようやく実を結ぶ希望が共存する姿に胸を打たれました。作品を超えた大きなテーマを描いた楽曲だと思います。

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