この実写化がすごい!漫画ファンも認めた映画化成功例10選

映画

日本の映画産業を支える漫画作品の映画化

日本の漫画は、国内だけでなく世界中で愛される文化です。漫画の神様と言われる手塚治虫の時代から現在に至るまで、途切れることなく発展を続け、日本のエンターテインメントを語るうえで欠かせない存在になりました。特にアニメは世界的に人気が高く、その多くが漫画を原作としています。

そして今、日本の漫画やアニメを原作とした映画は、単に国内の観客を魅了するだけでなく、世界市場でも大きな成功を収めています。2024年の日本映画の輸出実績は5億4030万ドルに達し、2014年の約7764万ドルと比べると、この10年で約7倍に拡大しました。アニメ映画のヒットが成長を牽引していることは間違いありませんが、実写映画の評価も着実に高まっており、日本映画全体がグローバルな市場で存在感を増しています。

2024年の映画興行収入、邦画が歴代最高を記録 アニメ比率が2000年以降最大に | ORICON NEWS

もはや「漫画なしに日本の映画は語れない」といっても過言ではありません。

漫画の実写化はなぜ難しいのか?

ところが「漫画の実写化」となると話は別。原作愛が強いほど「期待はずれ」「キャストが違和感」という声が渦巻きます。紙面の躍動感を再現できない、キャラクターの奥行きが失われる——漫画大国なのに、なぜ成功例が極端に少ないのでしょうか?

そもそも、漫画という表現をそのまま実写に落とし込むこと自体が難しいのかもしれません。デフォルメされたキャラクターや独特の演出は、紙面やアニメだからこそ成立するものも多く、現実の映像で再現しようとすると違和感が生じることもあります。

日本映画市場の中で存在感を増す漫画原作映画

とはいえ、日本の映画産業全体を見てみると、漫画を原作とする映画が大きな支えになっているのは事実です。2024年の年間興行収入ランキングを見ても、その傾向はより顕著になっています。

2024年にヒットした映画 興行収入10億円以上の作品(41本)リスト | ORICON NEWS

2024年の年間興行収入ランキング(日本)

  1. 名探偵コナン 100万ドルの五稜星 158億円
  2. 劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦 116億4000万円
  3. キングダム 大将軍の帰還 80億3000万円
  4. 劇場版 SPY×FAMILY CODE: White 63.2億円

上位4作品はいずれも漫画を原作とした映画でした。「キングダム 大将軍の帰還」以外の3作品はアニメ映画ですが、それでも漫画の実写化作品が3位に入るのは注目すべきことです。

さらに、「キングダム 大将軍の帰還」の興行収入は歴代の漫画原作の実写映画の中で「ROOKIES -卒業-」「THE LAST MESSAGE 海猿」に次ぐ3位という記録を達成しました。これも、日本の映画市場における漫画原作作品の強さを示す結果と言えます。

興行収入と映画の出来は別の話

ここで気になるのは、興行収入が高い作品=映画の出来がいい作品なのか? という点です。もちろん、そうとは限りません。

映画の興行成績は、作品のクオリティだけで決まるわけではなく、上映館数、プロモーション戦略、原作の知名度、俳優の人気など、さまざまな要素に大きく左右されます。特に人気漫画の映画化は、作品そのものの評価とは関係なく、話題性だけで観客を動員するケースも少なくありません。

それでも、漫画の実写化の中には、原作の魅力を活かしつつ、映像作品としても高く評価されるものがあります。興行収入だけでは測れない、完成度の高い作品も確実に存在しているのです。

この記事で紹介する映画の選考基準

ここまで興行収入や映画市場の話をしてきましたが、今回の選考基準はシンプルです。「私が面白いと思った作品」。やはり、自分自身が面白いと感じない作品を紹介するのはどうかと思いますし、そもそも面白くない作品については書くこと自体が難しいです。映画を語るなら、やはり自分が楽しめた作品を紹介したい。

とはいえ、それだけではどうしても個人的な好みに偏りすぎるため、レビューや口コミも参考にしました。具体的には、日本有数のレビューサイト『Filmarks』『映画.com』、そして世界的に利用されている『IMDb(アイエムディービー)』の評価を基準にし、星の数が極端に低い作品は除外しています。

もちろん、評価が低くても個人的に面白いと感じる作品はあります。ただ、それについてはまた別の機会にご紹介します。

漫画を実写化に成功!おすすめ日本映画10選

それでは、これから映画を紹介していきます。その前に、「映倫区分」について簡単に説明します。

映倫区分とは、日本の映画倫理機構(映倫)が定める映画の年齢制限のことです。映画によっては年齢による制限があるため、観る前に確認しておきましょう。

映倫区分には、以下の4種類があります。

  • G:誰でも観られる(全年齢対象)
  • PG12:12歳未満は、親や保護者の助言・指導が必要
  • R15+:15歳以上のみ観覧可能
  • R18+:18歳以上のみ観覧可能

各映画の紹介では、表に映倫区分を記載していますので、参考にしてください。ただし、この区分は劇場公開される映画に適用されるものです。ストリーミング配信には直接影響しませんので、各ストリーミングサービスの年齢制限もあわせて確認してください。また、これは日本国内の基準のため、お住まいの国や地域では異なる場合があります。詳しくは、公式情報をご確認ください。

海街diary

Filmarks3.7
映画.com3.8
IMDb7.6
タイトル海街diary
ジャンルドラマ、ファミリー
公開年2015年
監督是枝裕和
出演綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家吉田秋生
連載期間2006年-2018年(月刊フラワーズ)

映画のあらすじ

鎌倉で暮らす香田幸、佳乃、千佳の三姉妹のもとに、15年前に家を出て行った父親の訃報が届く。三人は山形での葬儀で、初めて異母妹のすずと出会う。母を亡くし、身寄りのないすずに対し、長女の幸は鎌倉で一緒に暮らさないかと提案する。こうして四姉妹となった彼女たちは、古都鎌倉で四季を共に過ごし、それぞれの過去や葛藤と向き合いながら、家族としての絆を深めていく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 鎌倉の美しい風景や、四季折々の食卓の描写など、原作の持つ穏やかで繊細な世界観を見事に映像化しています。キャラクターの心情描写も丁寧に描かれており、原作ファンからも高い評価を得ています。
  • キャスティング: 綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという豪華女優陣が、それぞれのキャラクターを見事に演じ分けています。四姉妹の自然な掛け合いは、見ている者の心を温かくします。
  • 演出: 是枝裕和監督ならではの、日常を丁寧に描く演出が光ります。何気ない日常の描写の中に、深い感情や人間関係が描かれており、観る者の心に深く染み渡ります。
  • 映像美: 鎌倉の美しい風景が、四季を通じて丁寧に描かれています。特に、桜並木や海辺のシーンなど、印象的な映像が多く、作品の魅力を高めています。
  • 音楽: 菅野よう子の音楽も、作品の雰囲気にマッチしており、物語をより一層引き立てています。

個人的なおすすめポイント

是枝作品であり、4姉妹の物語、そして末っ子を広瀬すずが演じる点で、2025年1月にNetflixで配信される「阿修羅のごとく」と共通しています。しかし、今作は「阿修羅のごとく」のようなドロドロした人間関係や派手な演出はなく、四姉妹の日常を通じて家族の絆や心の機微を丁寧に描いています。特に鎌倉の美しい街並みや自然が印象的で、是枝監督らしい役者の自由な演技が光ります。姉妹の掛け合いは必見です。

その他特筆事項

  • ロケ地となった鎌倉は、映画公開後、多くの観光客が訪れるようになりました。
  • 是枝裕和監督作品の中でも、特に評価の高い作品の一つです。
  • 第39回日本アカデミー賞では最優秀作品賞や監督賞を受賞するなど、数々の映画賞を受賞しました。

るろうに剣心

映画『るろうに剣心』予告編 2012年8月25日公開
Filmarks3.6
映画.com3.7
IMDb7.4
タイトルるろうに剣心
ジャンルドラマ、歴史、アクション
公開年2012年
監督大友啓史
出演佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家和月伸宏
連載期間1994年-1999年(週刊少年ジャンプ)

映画のあらすじ

明治11年、東京。かつて「人斬り抜刀斎」と呼ばれた緋村剣心は、逆刃刀(さかばとう)を手に、不殺の誓いを立てて旅をしていた。そんな中、剣心は神谷活心流(かみやかっしんりゅう)の師範代・神谷薫と出会う。薫は、剣心が抜刀斎だと知りながらも、彼を受け入れようとする。しかし、剣心の過去を知る者たちが次々と現れ、剣心は再び戦いに巻き込まれていく。逆刃刀は原作者の和月伸宏さんが考案したもので、実際にある刀ではありません。刃と峰が逆になっているので、切り付けても相手を殺傷できない構造になっているという設定です。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 漫画の持つ躍動感や、キャラクターの個性を忠実に再現しています。特に、剣心のアクションシーンは、原作ファンからも高い評価を得ています。
  • キャスティング: 佐藤健が演じる剣心の、優しさと凄みを併せ持つ雰囲気は、原作のイメージにぴったりです。武井咲が演じる薫も、明るく芯の強い女性を好演しています。
  • アクションシーン: 剣術指導に、映画『ブレイド2』などを手掛けた谷垣健治氏を迎え、スピード感あふれるアクションシーンは、本作の大きな見どころの一つです。

個人的なおすすめポイント

アクション映画としての完成度が非常に高く、原作を知らない人でも十分に楽しめる内容です。剣心の過去や葛藤、そして薫との出会いを通して成長していく姿は、多くの観客の共感を呼びました。また、漫画原作にありがちな「コスプレ感」や必殺技名を叫ぶような興醒めする演出が一切なく、原作ファンも違和感なく楽しめる仕上がりとなっています。さらに、登場人物一人一人が魅力的に描かれており、この点も映画の成功に大きく貢献していると感じました。

その他特筆事項

  • 続編として、他4作が公開されていますが、そのどれもが好評で、この原作の実写化との相性の良さを証明しています。
  • 2023年、2024年には、原作者完全監修による新作TVアニメが放送され、再び注目を集めています。

わたしの幸せな結婚

映画『わたしの幸せな結婚』予告【3/17公開】
Filmarks3.6
映画.com3.8
IMDb7.0
タイトルわたしの幸せな結婚
ジャンルドラマ、ファンタジー、恋愛、歴史
公開年2023年
監督塚原あゆ子
出演目黒蓮、今田美桜、渡邊圭祐、大西流星
映倫区分G(全年齢対象)
原作者顎木あくみ(あぎとぎあくみ)
キャラクター原案月岡月穂
漫画家高坂りと
連載期間2018年-(ガンガンONLINE)

映画のあらすじ

名家の斎森(さいもり)家に生まれた美世(みよ)は、継母と異母妹から虐げられ、使用人のような扱いを受けて育った。縁談の話が持ち上がるも、相手は冷酷無慈悲と噂される久堂家の当主・清霞(きよか)。絶望する美世だったが、久堂家で過ごすうちに、清霞の意外な一面を知り、次第に惹かれていく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ和風ファンタジーの世界観や、美世と清霞の心情の変化を丁寧に描いています。特に、二人の関係性がゆっくりと深まっていく様子が、繊細に表現されています。
  • キャスティング: 目黒蓮が演じる清霞のクールな佇まいと、今田美桜が演じる美世の儚くも芯の強い姿は、漫画のイメージに合致していると評価が高いです。
  • 演出: 塚原あゆ子監督の丁寧な演出が、物語の持つ繊細な感情表現を引き出しています。美しい映像や音楽も、作品の雰囲気を盛り上げています。塚原あゆ子監督は「アンナチュラル」「MIU404」「グランメゾン東京」などで演出を手掛けています。
  • ロマンス要素: 美世と清霞の恋愛模様が丁寧に描かれており、多くの観客の心を掴みました。

個人的なおすすめポイント

虐げられて育ったヒロインが、結婚生活を通じて成長していく姿を描いた、心温まる物語です。いわゆるシンデレラストーリーで、今田美桜さんが演じる美世は、常に伏し目がちで、息を吐くように謝る姿が習慣化しています。その徹底的に虐げられる様子は、観ていて胸が痛むほどです。これまで明るく元気な役柄を演じることが多い印象があった彼女が、ここまで繊細で重みのある役を見事に演じ切ったことに驚かされました。和風ファンタジーやロマンス作品が好きな方には特におすすめの一作です。

その他特筆事項

  • 原作は顎木あくみさんが「小説家になろう」に投稿したオンライン小説で、2018年に漫画の連載がスタート。翌2019年には小説が書籍化されました。
  • アニメ版も2023年に放送され、高い評価を得ています。さらに、2025年1月には第二期が放送されるなど、人気が続いています。
  • 小説、漫画、アニメ、実写映画と、すべてのメディアで高い評価を受けている稀有な作品です。

メタモルフォーゼの縁側

映画『メタモルフォーゼの縁側』60秒予告 6月17日(金)全国ロードショー
Filmarks4.0
映画.com4.0
IMDb7.0
タイトルメタモルフォーゼの縁側
ジャンルドラマ、コメディ、青春
公開年2022年
監督狩山俊輔
出演芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家鶴谷香央理
連載期間2017年-2020年(コミックNewtype)

映画のあらすじ

夫に先立たれ、孤独な日々を送る75歳の雪は、ふと立ち寄った書店でBL(ボーイズラブ)漫画と出会う。表紙の美しさに惹かれて手に取ったことがきっかけだった。そこで出会ったのは、書店でアルバイトをしている女子高生のうらら。BLに詳しい彼女と意気投合し、雪は初めてBLの世界に触れていく。年の離れた二人は、BLを通して心を通わせ、それぞれの日常に変化をもたらしていく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ穏やかで優しい空気感、そして登場人物たちの繊細な心情を見事に映像化しています。特に、雪とうららの関係性が丁寧に描かれている点が評価されています。
  • キャスティング: 芦田愛菜が演じるうららの等身大の女子高生らしさ、宮本信子が演じる雪の可愛らしさと上品さを兼ね備えた演技は、原作ファンからも好評です。二人の自然な掛け合いが、作品の魅力を引き立てています。
  • 演出: 狩山俊輔監督の丁寧な演出が、物語の持つ温かさを引き出しています。日常の何気ない風景や、二人の心の機微を丁寧に描いた演出は、観る者の心を温かくします。
  • テーマ性: 年齢や世代を超えた友情、そして新しい世界に飛び込むことへの勇気を描いたテーマは、多くの観客の共感を呼びました。

個人的なおすすめポイント

年齢や世代を超えた友情を描いた作品です。BLというテーマを扱いながらも、誰でも楽しめる内容に仕上がっています。劇中に登場するBL漫画「君のことだけ見ていたい」と現実世界のリンクが自然に描かれ、過剰な演出がない点が印象的でした。また、新しいことを始める時の不安や、それに立ち向かう勇気をリアルに表現している点も魅力的です。

その他特筆事項

  • 劇中に登場するBL漫画「君のことだけ見ていたい」の作画は、BL漫画家のじゃのめが担当しています。
  • 映画化をきっかけに、原作漫画も改めて注目を集めました。
  • 幅広い世代から支持を集め、口コミで評判が広がった作品です。

ヒミズ

映画『ヒミズ』予告編
Filmarks3.6
映画.com3.8
IMDb7.0
タイトルヒミズ
ジャンルクライム、ドラマ、スリラー、青春
公開年2012年
監督園子温
出演染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、吹越満
映倫区分PG12
漫画家古谷実
連載期間2001年-2002年(週刊ヤングマガジン)

映画のあらすじ

住田祐一は、将来に何の希望も持てず、ただ普通に生きることを願う平凡な中学生。しかし、家庭環境は劣悪で、母親は家を出て行き、父親からは虐待を受けていた。同じように孤独を抱える同級生の茶沢景子は、住田に寄り添おうとするが、住田は父親への憎しみを募らせていく。そんな中、東日本大震災が発生し、住田の周りの環境はさらに悪化していく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ重苦しい雰囲気や、登場人物たちの絶望感を見事に映像化しています。ただ、ストーリーや人物設定の変更があります。また、東日本大震災後という設定は漫画原作とは大きく異なる点です。
  • キャスティング: 染谷将太が演じる住田の、絶望と狂気を孕んだ演技、二階堂ふみが演じる景子の、健気で力強い演技は、高く評価されています。
  • 演出: 園子温監督の独特の演出が、作品の持つ狂気や絶望感を際立たせています。特に、暴力描写や、人間の心の脆さを描いたシーンは、見る者に強い印象を与えます。
  • 時代背景: 東日本大震災後の社会状況を背景に描いている点が、作品に重みを与えています。震災によって浮き彫りになった社会の矛盾や、人々の心の傷を描いた点は、多くの観客の心を打ちました。

個人的なおすすめポイント

非常に重く、見る人を選ぶ作品ではありますが、人間の心の闇や社会の矛盾を容赦なく描いた衝撃的な内容です。ストーリーの変更や、映画と漫画の終わり方の違いについては賛否が分かれますが、個人的には映画の終わり方に納得しています。

その他特筆事項

  • 東日本大震災後の社会状況を背景に描いているため、見る人によっては精神的に負担を感じる可能性があります。
  • 第68回ヴェネツィア国際映画祭で、主演の染谷将太と二階堂ふみがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を揃って受賞するなど、海外でも高い評価を受けました。

零落(れいらく)

浅野いにおの漫画を竹中直人監督が映画化! 斎藤工主演映画『零落』予告編【2023年3⽉17⽇公開】
Filmarks3.5
映画.com3.4
IMDb6.4
タイトル零落
ジャンルドラマ
公開年2023年
監督竹中直人
出演斎藤工、趣里、MEGUMI、山下リオ
映倫区分PG12
漫画家浅野いにお
連載期間2017年(ビッグコミックスペリオール)

映画のあらすじ

かつて人気漫画家だった深澤薫は、8年間連載していた作品の完結後、次作の構想も浮かばず、編集者からもぞんざいに扱われる日々を送っていた。妻との関係も冷え切り、孤独を感じる中で、彼はある日“猫のような目をした”風俗嬢・ちふゆと出会う。彼女との出会いをきっかけに、深澤は堕落した生活を送るようになるが、その中で自身の内面と向き合っていく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ独特の雰囲気や、主人公の抱える虚無感、焦燥感を丁寧に描き出している点が評価されています。特に、主人公の精神的な葛藤を表現する演出は、原作ファンからも支持を得ています。
  • キャスティング: 主人公・深澤薫役の斎藤工が、倦怠感と内面の葛藤を抱える漫画家を見事に演じています。また、ちふゆ役の趣里も、ミステリアスな雰囲気を持ちながらもどこか人間味のあるキャラクターを好演しています。
  • 映像美: 退廃的な雰囲気や、主人公の心情を反映した映像表現が印象的です。暗いトーンで描かれる場面が多く、主人公の孤独感や閉塞感を際立たせています。

個人的なおすすめポイント

漫画家の内面を深く掘り下げた作品です。クリエイターに限らず、人生で挫折や喪失感を経験したことがある人なら、多くの共感を得られるでしょう。全体を通して暗いトーンが貫かれており、観る人を選ぶ作品ではありますが、思わずくすっと笑ってしまうシーンも散りばめられています。まさに、この映画を通じて「人間」を見つめているような感覚を味わいました。

ソラニン

映画『ソラニン』予告編
Filmarks3.6
映画.com3.6
IMDb7.0
タイトルソラニン
ジャンルドラマ
公開年2010年
監督三木孝浩
出演宮﨑あおい、高良健吾、桐谷健太、近藤洋一
映倫区分情報なし(Amazonプライムビデオでは13+)
漫画家浅野いにお
連載期間2005年-2006年(週刊ヤングサンデー)

映画のあらすじ

大学卒業後、特に目標もなくフリーター生活を送る芽衣子は、恋人の種田と東京で同棲生活を送っていた。種田は音楽への夢を諦めきれず、バンド活動を続けていたが、なかなかうまくいかない日々を送っていた。ある日、芽衣子は現状を変えたいと思い、会社を辞める。それをきっかけに、種田も音楽に本腰を入れることを決意するが…。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ空気感や、登場人物たちの心情を丁寧に描いています。特に、若者たちの等身大の姿をリアルに描いている点が評価されています。
  • キャスティング: 宮﨑あおいが演じる芽衣子の自然な演技、高良健吾が演じる種田の不器用ながらも熱い想いを表現した演技は、原作ファンからも好評です。
  • 演出: 三木孝浩監督の繊細な演出が、物語の魅力を引き出しています。音楽シーンも印象的に描かれており、作品の雰囲気を盛り上げています。
  • 音楽: ASIAN KUNG-FU GENERATIONが歌う主題歌「ソラニン」は、原作者・浅野いにおさんが作詞を手掛けたことでも知られ、作品の象徴的な存在となっています。現在でもアジカンの代表曲の一つとして高い人気を誇っています。

個人的なおすすめポイント

将来への不安や、夢と現実の狭間で揺れる若者たちの姿をリアルに描いた作品です。原作漫画も大好きで、見つけるとつい手に取ってしまいます。数年前にコンビニで再販されているのを見つけ、懐かしさからまた読み返しました。この作品には特別な思い入れがあり、映画館で観たときの記憶も鮮明です。特にバンドのライブシーンはリアリティがあり、ライブハウス独特の熱気や匂いまで伝わってくるような臨場感があります。音楽好きにもぜひおすすめしたい一作です。

その他特筆事項

  • 2017年には、新作漫画「零落」とともに、12年ぶりの描き下ろし新作「第29話」を収録した新装版が発売されました。

テルマエ・ロマエ

映画『テルマエ・ロマエ』予告 出演:阿部寛/上戸彩
Filmarks3.5
映画.com3.5
IMDb6.4
タイトルテルマエ・ロマエ
ジャンルタイムトラベル、ファンタジー、コメディ
公開年2012年(第1作)、2014年(第2作)
監督武内英樹
出演阿部寛、上戸彩、北村一輝、市村正親
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家ヤマザキマリ
連載期間2008年-2013年(コミックビーム)

映画のあらすじ

古代ローマ帝国の浴場設計技師ルシウスは、斬新なアイデアが浮かばず悩んでいたある日、公衆浴場で不思議な体験をする。浴槽の底から現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまったのだ。日本の風呂文化に衝撃を受けたルシウスは、そのアイデアをローマに持ち帰り、浴場設計に活かしていく。その後もタイムスリップを繰り返し、日本の風呂文化とローマの風呂文化の融合が描かれます。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 古代ローマの風景や浴場の様子を忠実に再現し、原作の持つ独特の世界観を見事に映像化しています。阿部寛をはじめとするキャストの配役も、原作のイメージに合致していると評価が高いです。
  • キャスティング: 主人公ルシウス役の阿部寛の演技は特筆もので、その濃い顔立ちとコミカルな演技が作品の魅力を引き出しています。上戸彩演じるヒロインとの掛け合いも面白いです。
  • 映像美: 古代ローマの壮大な風景や、日本の情緒あふれる銭湯の様子など、映像の美しさも作品の魅力の一つです。タイムスリップの描写も効果的に描かれています。
  • 文化考証: 古代ローマの文化や風俗を丁寧に考証しており、エンターテイメントとしてだけでなく、歴史的な視点からも楽しめる作品となっています。

個人的なおすすめポイント

「阿部寛が出演している作品にはずれ無し」というのが、私の個人的な経験に基づく確信です。今作では、古代ローマ人が現代日本にタイムスリップするという奇抜な設定ながら、風呂文化を通じて両国の文化の違いや共通点をユーモアたっぷりに描いています。阿部寛さんのコミカルな演技は特に注目で、作品全体を引き立てています。老若男女問わず楽しめる、エンターテイメント性の高い作品としておすすめです。

その他特筆事項

  • 2022年にはNetflixでアニメシリーズ「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」が配信されました。
  • 2024年2月6日より、最終回の20年後を舞台とした続編となる『続テルマエ・ロマエ』が『少年ジャンプ+』(集英社)にて連載を開始しました。

翔んで埼玉

『テルマエ・ロマエ』の監督が贈るディスり合戦開幕! 映画『翔んで埼玉』予告編 /2月22日(金)公開
Filmarks3.5
映画.com3.7
IMDb6.3
タイトル翔んで埼玉
ジャンルコメディ、ファンタジー
公開年2019年(第1作)、2023年(第2作)
監督武内英樹
出演二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、中尾彬
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家魔夜峰央
連載期間1982年(花とゆめにて不定期連載)

映画のあらすじ

東京都民から迫害を受け、通行手形なしでは東京に入ることすら許されない埼玉県民。東京の名門校・白鵬堂学院では、東京都知事の息子である壇ノ浦百美が生徒会長を務め、埼玉県民への差別を助長していた。そんな中、アメリカ帰りの転校生・麻実麗が現れる。実は麗は隠れ埼玉県人で、百美と出会い、惹かれ合ううちに、埼玉県人の解放を目指す戦いに身を投じていく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 原作の持つ独特のギャグセンスや、誇張された設定を見事に映像化しています。特に、埼玉ディスを前面に押し出した演出は、賛否両論ありながらも大きな話題を呼びました。
  • キャスティング: GACKTが演じる麗の美しさと、二階堂ふみ演じる百美のコミカルな演技が絶妙にマッチしています。他のキャストも個性的なキャラクターを好演しており、作品の魅力を引き立てています。
  • 演出: 埼玉を徹底的にディスりながらも、どこか愛にあふれた演出が特徴です。埼玉県民からも好意的に受け入れられ、地域活性化にも貢献しました。
  • 話題性: 埼玉ディスという過激なテーマが、公開前から大きな話題を呼びました。その話題性が興行収入にも大きく貢献しました。

個人的なおすすめポイント

この作品を楽しむうえで重要なのは、良い意味で真面目に見るべきではないという点です。徹底的な埼玉ディスが笑いを誘い、エンターテイメント性の高い仕上がりとなっています。東京と隣接する県の微妙な立ち位置の違いを理解していないと、すべての面白さを拾いきれないかもしれませんが、それでもこの壮大なバカバカしさは十分伝わるはずです。肩の力を抜いて気軽に楽しめる、おすすめのコメディ映画です。

その他特筆事項

  • 埼玉県知事が本作を絶賛するなど、地域を巻き込んだ盛り上がりを見せました。
  • 原作は1982年の漫画ですが、映画化をきっかけに再び注目を集めました。
  • 「邦画史上最大の茶番劇」というキャッチコピーで公開された本作は、第43回日本アカデミー賞で最多12部門を受賞し、まさに壮大な茶番劇として幕を閉じました。

ピンポン

映画『ピンポン』本予告
Filmarks3.8
映画.com3.6
IMDb7.0
タイトルピンポン
ジャンルドラマ、スポーツ、コメディ、青春
公開年2002年
監督曽利文彦
出演窪塚洋介、井浦新、中村獅童、大倉孝二
映倫区分G(全年齢対象)
漫画家 松本大洋
連載期間1996年-1997年(ビッグコミックスピリッツ)

映画のあらすじ

片瀬高校に通う星野裕(ペコ)は、天真爛漫な性格で卓球を愛する少年。幼馴染の月本誠(スマイル)は、無口でクールだが、内に秘めた才能を持つ。二人は子供の頃から卓球場で育ち、互いをよく知る仲だった。ペコは自信過剰な面もあるが、実力は確か。一方、スマイルはペコに助けられることが多く、彼をヒーローのように思っていた。しかし、インターハイをきっかけに、二人の関係や卓球への向き合い方が変化していく。

成功の理由・評価ポイント

  • 原作再現度: 松本大洋の独特な絵柄や世界観を、見事に映像化しています。特に、キャラクターの表情や仕草、試合の描写など、原作の魅力を忠実に再現している点が評価されています。
  • キャスティング: ペコ役の窪塚洋介、スマイル役のARATA(井浦新)をはじめ、主要キャストの演技が素晴らしく、キャラクターの個性を引き出しています。特に窪塚洋介の、ペコの奔放さと内に秘めた繊細さを表現した演技は高く評価されています。
  • 演出: 宮藤官九郎が脚本を担当しており、原作の持つ熱いドラマに、ユーモアの要素も加わっています。曽利文彦監督のスタイリッシュな映像表現も、作品の魅力を高めています。
  • 音楽: SUPERCARが担当した主題歌「YUMEGIWA LAST BOY」は、作品の雰囲気に非常にマッチしており、映画の印象を強く残しています。

個人的なおすすめポイント

スポーツ映画にはあまり興味が湧かない私ですが、「ピンポン」は単なるスポ根映画ではなく、青春の葛藤や人間関係を丁寧に描いた、人間ドラマとしての魅力を持つ作品です。試合シーンも迫力があり、見応えがあります。また、アニメ版は原作漫画の魅力を活かしつつ、さらに自由で独創的な演出が楽しめるため、そちらもぜひおすすめしたいです。

まとめ:漫画作品の実写映画が持つ可能性と魅力

日本の漫画文化は、その独特の表現力とストーリーテリングによって、世界中で愛されています。しかし、漫画を実写映画として再現することは、時に困難を伴います。特に、キャラクターの衣装や小道具のクオリティが低いと「コスプレ感」が出てしまい、作品の世界観が損なわれてしまうことがあります。そのため、実写化においては、衣装や小道具の細部までこだわり、原作の雰囲気を忠実に再現することが重要です。

また、今回漫画原作の映画を多く観ましたが、漫画の実写化は、コメディ作品と相性が良いと感じました。コメディ作品の場合、漫画特有の誇張された表現や日常ではありえない衣装も、「笑い」の要素として受け入れられやすく、むしろその非現実性が作品の魅力になるからです。今回紹介した10作品の中にも、そんなコメディ要素を巧みに取り入れた成功例が含まれています。

これからも、漫画と実写映画の融合が進み、さらに多くの傑作が生まれることを期待しています。アメコミは実写化に大成功しているわけですし、日本の漫画作品の実写化もそのように広く受け入れられるようになるといいですね。

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